クリスマス当日、はからずも風邪を引き込んでしまっていた。
正確にいうと、ケチケメート(Kecskemét)に行く前くらいから悪寒嫌な予感はしていた。それから1日中くしゃみが止まらない日があった。氷点下の外気温にもすっかり慣れたつもりでいたものの、体がSOSを発していたようだった。だんだん喉と頭が痛くなり、ベッドに同化するように倒れこんでしまっていた。


というわけで、正午近くまで寝込んでいたのだけど、それでも年に一度の日、このまま台無しにしたくなかった。だってこの日はローストチキンを焼くって前々から決めていたのだもの。
気合いで起き上がり、キッチンに向かった。


東京ではひとり暮らしにも関わらず、2段式の電気オーブンレンジを持っていて、時間を見つけてはパンやケーキを作って焼いていた。食べることよりこうして何かを形に仕上げていくという工程がとても好きだった。そして、焼くだけで仕上げられる簡単なオーブン料理も作るようになっていた。狭い部屋でもちょくちょくホームパーティーを開いていた。


それなのにブダペストに引越してから、せっかく大きなガスオーブンが設置されているのに、これまで一度も使うことがなかった。忙しかったからとか、避けていたからとかそういうのではなく、ただなんとなくタイミングがなかったのだ。だから、クリスマスの日こそ使おうと決めていた。その決意は固かった。前日に体をふらふらさせながら中央市場まで行ってきて、丸鶏を買ってきた。


数々のレシピサイトを眺めながら、下ごしらえを済ませてオーブンの中に。焼いている間は、自分で作ったオーナメントやいただきものを集めて、それらしくテーブルをデコレーションした。



スロヴァキアのペジノク(Pezinok)で買ってきた白ワインを飲まながら、ゆっくりと焼き上がるのを待っていた。


美味しそうな香りに包まれて、それだけで幸せな気分に浸りながら無事に完成。



付け合わせに焼いたのは、マッシュルームとパプリカとニンジンとセロリ。写真にはうつっていないが、中にもぎっしり野菜を詰めている。後で天板に残った焦げの部分でソースも作ってみた。


しっかり中まで火が通っていたし、ローズマリーなどのハーブもほどよく効いていて、初めての割にはよくできたと思う。もちろん作っている工程も楽しくて、風邪を引いていることも忘れてしまったくらいだった。


結局作って食べて、ワインも飲んで、ソースを作りながら食べ残しをタッパーに詰めて、食器類を洗って、としているうちに睡魔が襲ってきて、またそのままベッドに同化。でもチキンにまぶしたハーブのおかげか達成感のおかげか、翌朝目が醒めるとケロリと治っていた。


来年は違うレシピで焼いてみるか、それともチキンでなくて七面鳥に挑戦してみるか、今からいろいろと計画を巡らせているのだけど、いずれにしても健康な体で過ごしたい。


まずはこの寒さと乾燥に慣れないと!