魂が揺さぶられるようなピアノ演奏を聴いた。


国立駅前に、かつての駅舎を再現した「旧国立駅舎」という建物がある。

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赤い三角屋根のとてもかわいらしい外観で、中に入ると切符売り場や改札、待合室が再現されていて、展示室となっている区画もある。建物の横を通り過ぎようとしたら、中から美しいピアノの旋律が聞こえてきた。どこかで聞いたことのある曲。記憶をたどるとすぐに思い出すことができた、あの曲。

吸い寄せられるように中に入った。私の前には同じく魔法にかかったように入っていく老婦人がいた。老婦人はこの曲を知っているのだろうか。たぶん知らないだろう。だって、その曲はX JAPANの"The Last Song"だったのだから。

The Last Song(CDエクストラ)
X JAPAN
ポリドール
1998-03-18


いや、曲を知っている知らないは関係ないのだ。ただ美しい演奏をもっと近くで聴きたいと思って彼女も中に入っていったに違いない。

待合室に入ると、すでに老若男女問わず多くの聴衆が集まっていて、空間いっぱいに響き渡る美しい旋律に耳を傾けていた。隅に置かれた「プレイ・ピアノ」を演奏していたのは、私と同世代とおぼしき男性だった。男性はプロのミュージシャンなのかもしれない。アマチュアにしては上手すぎるという印象だった。しかも、ただ上手いだけではなかった。それこそ、聴く人の心を、魂を揺さぶるような素晴らしい演奏だった。次の用事があるにもかかわらず、すっかり聞き惚れてしまったのだった。


演奏が終わった瞬間、聴衆から拍手喝采が沸き起こった。男性が次の演奏を始めるまでそれはしばらく続いていた。そろそろ向かわなければと、名残惜しさを背中に感じながらその場を立ち去った。

帰宅してからさっそくX JAPAN『バラード・コレクション(BALLAD COLLECTION)』のCDを取り出した。ひたすら聴きまくりながら、このCDを初めて手に取った頃の日々を思い出したりした。