昨年公開され、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞したことでも話題になった映画「万引き家族」が、年を明けてついにブダペストにもやってきた。ハンガリー語のタイトルは「ボルティ・トルヴァヨク(Bolti tolvajok)」。おそらく英題の"Shoplifters"を訳したものだと思われる。ちょうど映画館「プーシュキン・モズィ(Pusikin Mozi)」の近くで用事があったついでに、さっそく観てきた。 

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ハンガリーにおいての外国語映画はだいたい吹き替えが多いのだが、ありがたいことに今のところ音声は日本語+字幕はハンガリー語での上映とのこと。


チケットを購入し、「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」の時と同じ地上階の部屋の前に立っていたスタッフに部屋の場所を訊いたところ、この部屋だとのことだったのでそのまま中へ。チケットを見ると「1列目の3番目の席」と書いてあって、つまりは最前列のちょっと左の席で、この時点で購入時にちゃんと希望の席を伝えておくべきだったと軽く後悔していた。だって前回はどのあたりの席が良いのか、購入時に訊かれたわけなのだから。一方で、ほかの観客たちは次々と真ん中の列から後ろの方の、スクリーンを観やすそうな席に座っていくので、もし予告編が終わった時点でそのあたりで空いている席があったら移るつもりでいた。そして、予告編が終わった直後に私が観たのは。


およそ現代の日本とは思えない、前時代的な欧米風のシーン。その右下に浮かび上がる字幕の主演俳優の名"Penélope Cruz"、つまりスペイン出身の女優ペネロペ・クルス。その名が見えた時点で全てを理解した。


部屋、間違っていた。


その瞬間速攻で部屋から出て行き、先ほど質問したスタッフに「なんか映画が違う!」(※現時点の私のハンガリー語会話レベルだとこれが精一杯)と伝えながらもう一度チケットを見せると、彼女は「ごめんなさい、上の階の部屋だったわ」と、申し訳なさそうな表情で誘導してくれた。「ごめんなさい」という言葉で彼女が自分のミスだと認めたということを察知して、それ以上文句を言わずに導かれた部屋の中へ。幸い、まだ予告編の上映中で本編は始まっていなかった。が、それよりもその部屋に入った瞬間に衝撃を受けた。


席、2列しかない。


ここで、チケット購入時にスタッフが希望の席を訊かなかった理由がわかった。そして、購入時自動的に「1列目の3番目の席」になった理由もわかった。


この部屋、席、2列しかない。


そこは、収容人数最大20人くらいの小さな部屋で、当然予告編中だというのに「1列目の3番目の席」だけぽっかりと空いていて、チケット購入時に席の希望を訊かれなかった理由がわかった瞬間、本編が始まった。音声は日本語+字幕はハンガリー語での上映とだけあって、観客が20人ほどしかいないのも納得した。


そんなこんなで鑑賞前にいろいろあったのだけど、そんなことも気にせずに没頭できたくらい映画自体は素晴らしい内容だった。さらに余韻もそこそこに、映画館をあとにして見たドナウ川の夕景も素晴らしかった。

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こんな綺麗な景色を見ているうちに、そのペネロペ・クルス主演の作品についてもちょっと気になって調べたてみたら、タイトルはハンガリー語で「ミンデンキ・トゥジャ(Mindenki tudja)」。英語だと"Everybody knows"、そして原題つまりスペイン語のタイトルが"Todos lo saben"音声はスペイン語+字幕はハンガリー語での上映とのことで、それなりのハンガリー語習得レベルでないと難しいことが判明した。まだ日本では未公開とのことなだけにとっても内容が気になる。


そして、 映画「万引き家族」がハンガリーにおいてどのような評価がされるのかも、とっても気になるところではある。