経営コンサルタントの大前研一氏の名言の中で、私自身非常に感銘を受けたものがある。


"人間が変わる方法は3つしかない。
 時間配分を変える。
 住む場所を変える。
 つきあう人を変える。
 この3つの要素でしか人間は変わらない。
 最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。"


前住んでいた街に引越してきたのは、この名言を知った1ヶ月後のことだった。




2年半程前のその時、私はどうしても自分を変えたかった。そのうちここで詳しく書こうと思っているのだけど、とにかくくすぶっていた。強引にでも自分を変える必要があったのだった。
そこで、「住む場所を変える」というのを実行してみたのだった。
 

よくよく冷静に考えてみたら、1つ目の「時間配分を変える」が一番実行しやすいし、大前氏も"どれかひとつだけ選ぶとしたら、「時間配分を変えること」が最も効果的"と提唱しているとのことだ。
確かに、一時期(今もなのか?)「朝活」がブームになったように、朝型の生活に切り替えて、その分ウォーキングやジョギングに励んだり、勉強やセミナー通いで自己啓発に励むことによって、変えられるものも多いと思われる。私も前職時代、始業前の朝8:00〜8:45の45分間マンツーマンの英会話レッスンに帰っていた頃があった。だけど、長続きしなかった。それに、やっぱりどうせだったら、その分遅くまで寝てたかったのだもの。
朝型の生活に変える以外にも、「時間配分を変える」方法はあるとはわかっているが、サラリーマンの私自身は平日のスケジュールはほぼ仕事の予定で左右されるし、せいぜい土日で変えていくしかなかった。


ちなみに、3つ目の「つきあう人を変える」は、一番実行しにくいと感じていた。まず自分の血の繋がった家族は変えられない。友達や恋人や配偶者だって、余程のことがない限り変えられない(しかもできれば「余程のこと」はないことが望ましい)。職場の人間関係も(異動や転勤、または転職をしない限り)は変えにくい。「つきあう人を変える」には、自分の意志だけではどうにもならないのだ。そもそも「つきあう人」というのはその相手の意志もあるのだから。


そう考えると、当時の私がすぐに実行に移せたのは、「住む場所を変える」ことだった。幸運にもそう決めた1週間後には納得のいく物件も見つかり、その数週間後には新しい部屋でのスタートを切っていた。


「住む場所を変える」ことで、自動的に「時間配分」も変わった。通勤時間がぐっと縮まったのも大きい。目が覚めてから出かけるまでにゆっくり朝食を取ったり、細々とした家事を済ませたり、お弁当を作ってみたり、毎朝ゆとりのある時間を過ごせるようになった。帰宅時間も早まったので、近くのスーパーで食材を買って少し手の込んだ夕食を作ったり、DVDを観たり、習い事に通ったり、TOEICの勉強に励んだり、ゆっくりお風呂に浸かってリラックスできるようになった。
そのうち、自動的にとはいわないまでも、自然に「つきあう人」も変わった。ちょうどその頃仲良くなった友達が、偶然近所に住んでいた。友達兄妹も近くに住んでいたので彼らを通じて新しい飲み仲間もできた。引越したことで、会いやすくなった人たちもいた。もちろん、疎遠になった人たちもいたのだが。
いつの間にか毎日は、充実してキラキラ輝いたものに変わっていた。


そのうちあるきっかけで、ブダペストでの生活開始を決意することになった。ちょうどその頃近所の工事の騒音がひどくなり、更新の時期になって、日本での住まいも一旦変えた。「東京通勤事情 vol.1」で書いたように毎日通勤地獄に悩まされるようになったし、何より1日のうちで「通勤」が占める時間が増えたし、そのせいで平日の夜はなかなか友達にも会いにくくなった。ただし、これらは小さな変化でしかないと思っている。何より私自身が「今」大きく変わろうとしていないからだ。


大きく変わるのは「これから」なのだ。ブダペストに引越してからだ。前住んでいたあの部屋での生活での変化よりも、明らかに遥かに大きな変化が待ち受けている。
そしてその変化の結果、さらに充実してキラキラ輝いた人生となるかどうかは、私自身にかかっている。そう、そうなるように私自身が変えていくしかない。